清村矯正歯科

清村矯正歯科のブログでは、矯正歯科治療の疑問や症例について解説しています。

Archive for 4月, 2020

よくある質問Q&A 大人の矯正治療(5-2)

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Q5.口元が出ているのを治したいのですが、どれくらい変化がありますか?

前回抜歯による口元の変化について説明しました。今回はその続きです。前回の2症例はあごの位置関係が比較的正常に近い方のものを選びました。

今回は、あごの位置関係が異なる患者さんの変化を見ていきます。Cの患者さん上顎前突(出っ歯)でした。写真でみると前歯の突出がなくなり、下の歯のデコボコも改善しています(図1,2)。

治療前後のレントゲンを比較すると上の前歯が後退し、上下の唇の形に大きな変化がみられますが、元々下顎がかなり後退していたため、E-lineを用いた評価では下唇がまだ少し突出しています(図5)。

 


図1 患者C:20代女性 治療前

 


図2 患者C:20代女性 治療後

 


図3 患者D:20代女性 治療前

 


図4 患者D:20代女性 治療後

 


図5 患者C:治療前後のレントゲン写真比較

 


図6 患者D:治療前後のレントゲン写真比較

 

Dの患者さんは下顎前突(受け口)でした(図3,4)。

Cの患者さんは上下とも左右小臼歯を抜歯して治療を行いましたが、この方は上は抜かずに下の左右小臼歯と第2大臼歯を抜歯して治療を行いました。レントゲンの比較では下唇の突出がなくなり、E-line上に上下の唇が接してほぼ理想的な状態になりました。

C、Dの患者さんはどちらも骨格的な問題が大きかったため、より理想的な顔貌の変化を希望するなら外科矯正手術も検討するべきだと治療開始前にお伝えしましたが、お二人とも矯正治療でできる範囲での改善を希望されたケースです。

今回と前回、矯正治療による口元の突出度の変化をみてもらいました。元の骨格や唇や筋肉の影響もあるため、その変化は人それぞれで治療前にすべてを予測することは困難です。さらに難しいのは、患者さんがどのような変化を希望されているのかが治療前にはわからないことと、治療の途中や治療後に要望が変化する場合があることです。

以前、他の医院で治療後に相談に来られた患者さんで、かみ合わせも見た目も特に問題なかったので「前回の治療に問題はなくこれ以上治療の必要はない」と説明したことがありました。すると、この患者さんはある女優さんの写真を持ってきていて「こんな感じにならないか?」と言われたので「元の骨格が違うので無理」だとお答えしたことがあります。

10年以上前ですが、前歯が噛みあっていない「開咬」で、上下の前歯が突出した患者さんの治療を小臼歯を4本抜いて行いました。舌の癖もあり、難しい症例でしたが何とか終了し保定期間になったのですが、その途中で「もっと前歯が引っ込まないか?」と言い始めました。

上下の歯が引っ込んで口元は治療前よりは引っ込んでいるのですが、元々の唇が分厚いためか、確かに唇の出た感じは少し残っていました。治療前の主訴は「前歯が噛めないこと」で、歯の突出については気にしておらず、なぜ急に言い出したのかわかりませんでした。

写真や模型、レントゲンで治療前後の変化を見てもらい丁寧に説明したのですが、納得がいかないようでした。よくよく話を訊くと、友達から「口元が出ている」と言われたことが原因でした。この方にとっては、客観的な写真やレントゲン写真の比較よりも「友達の意見」のほうが重要だったようです。

矯正治療では、前歯が移動することで口元の審美性が大きく改善することはよくあります。ただし、それが患者さんの希望通りになるかどうかは、その方の「気持ち」によっても違ってくるようです。

また、かみ合わせの改善が目的で行われる治療結果であるため、外科手術のような大きな変化や、美容目的の細かな希望通りの改善は期待できません。

治療前にどのような変化が起きるかは、これまでの経験上ある程度は予測できるので、初診相談時にわかる範囲で説明を行っています。

 

 

 

Written by kiyomura

4月 7th, 2020 at 5:03 pm