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よくある質問Q&A 大人の矯正治療(1)
今回からは大人の矯正治療のQ&Aをはじめます。
まず「大人の矯正治療」という言葉の定義ですが、同じような言葉で「成人矯正」というのがあります。
成人矯正とは、その名の通り成人(20歳)に達した人の矯正治療という意味ですが、今回から説明する「大人の矯正治療」とは、親知らずを除く永久歯がほぼ生えそろっており、顎骨の成長もほぼ終了している人の矯正治療という定義とさせていただきます。
性別や成長に個人差があるため、何歳以上が対象になるかは断言できませんが、一般的には中学生以上の方が対象ということになります(成人の方ももちろん対象になります)。
Q1よくみる金具のついた矯正装置はいつから付けますか?
みなさんがもっともイメージされる矯正装置とは、マルチブラケット装置のことと思います。
すべての永久歯に金属やセラミックなどの金具が一つずつ付いている装置です(図1)。
図1 マルチブラケット装置
この装置を付けて治療を開始する時期は原則として永久歯がすべて生えそろってからになります。
また、永久歯が生えそろっていてもアゴの成長がたくさん残っている場合は成長を待ってから付けることになります。
図の2〜5は同じ人のレントゲン写真ですが、前歯と6歳臼歯の間の乳歯が抜けて、永久歯に生え変わった後に6歳臼歯の後ろから第二大臼歯が生えてきています。
図2 9歳時 前歯と奥歯以外は乳歯
図3 11歳時 前歯と奥歯の間の乳歯が抜けて永久歯に生え変わり中
図4 13歳時 乳歯は全て永久歯に生えかわり第二大臼歯の萌出前
図5 15歳時 第二大臼歯の萌出中
マルチブラケット装置は細かい歯の移動を目的とした装置ですので、歯がどんどん生え変わる混合歯列期に使用しても歯並びが変化していくので、効果が発揮されません。
図6、図8、図9、図10、図11はそれぞれ同じ患者さんの顎の成長を示したレントゲンです。
図6、7 9歳時と12歳時の比較 女子
元々は受け口だった。受け口は再発していないが上下のアゴ、特に下アゴがかなり大きく成長している。
図8、9 12 歳時と14歳時の比較
男子かなり出っ歯だったが、下アゴの成長を促進する装置を使用、かなり改善されている。
図10、11 12歳時と14歳時の比較 男子
かなり出っ歯。下アゴの成長を促進する装置を使用したが、あまり効果は得られなかった。
このように、歯が生え変わる時期、6歳臼歯の後ろから歯が生えてくる時期、そして思春期成長期は、歯並びだけでなく顎の位置も大きく変化することがあり、予測も大変困難です。
したがって、永久歯が生えそろっていても顎の位置が決まっていない小学生、中学生の時期に歯だけをきれいに並べても、かみ合わせそのものが変化する可能性があるため、マルチブラケット装置での治療は親知らず以外の永久歯が生えそろって、さらに顎の成長がある程度落ち着いてからになります。
できるだけ早く治療を始めて早く治療を終わらせたいという希望はわかりますが、せっかくきれいに並べても後から歯が生えてきたり、成長によってかみ合わせが変わってしまったりしては、結局複雑な装置が付いている期間が長くなってしまい、患者さん自身の負担が増してしまいます。