よくある質問Q&A 子供の矯正治療(3)
Q5.第一期治療(こどもの矯正治療)から第二期治療(本格的な矯正治療)に移行するのはいつ?
どのタイミングでマルチブラケットを使用した本格的な矯正治療に移行するかは、主に歯の生え変わりと顎骨の成長状態で判断します。
乳歯がすべて抜けて永久歯になって、第1大臼歯(6歳臼歯)の後ろから第2大臼歯が生えてきてから本格的な矯正治療に移行するのが一般的ですが(写真1、2、3)、第2大臼歯が生える時期になっても顎の発育が十分でない場合は、成長を待ってから第二期治療に移行する場合もあります。
写真1: 9才女児 入試の生え変わり中
写真2: 1年半後、入試が残り3本、下の第2大臼歯が生えてきている
写真3: さらに1年後:乳歯がなくなり第2大臼歯もすべて生えてきた状態
わかりやすい例で説明すると、反対咬合の場合、まだ成長が残っている時期には、マルチブラケット装置での治療を行いません。
これは成長によって下顎が前に出てくると、受け口がひどくなり歯の移動だけでは治せなくなることがあるためです。
逆に顎の発育は早いのに、歯がなかなか生え変わらない場合は装置がつけられないので生え揃うまで待たなければなりません。
ときどきみられる症状としては顎が小さすぎて(あるいは歯が大きすぎて)第2大臼歯が生えてこれない場合もあります(写真4、5)。
写真4: 左右の下の奥歯が倒れている
写真5:1年後、左は生えたが右は倒れたまま
このようなときは、他の永久歯を抜歯して生えてこない歯を並べるのか?もう少し待ったほうがいいのか? 判断が難しくなります。
Q6.第一期治療から治療を始めた場合と、第二期から治療をした場合では治療結果にどんな違いがありますか?
混合歯列期(乳歯と永久歯が両方生えている時期)から治療開始した場合と、永久歯が生えそろってから治療を始めた場合が、同じ治療結果であれば、わざわざ小さいころから時間をかけて治療するメリットはありません。早期治療のメリットは主に三つあります。
1)症状の重症化の予防
不正咬合の種類によっては、混合歯列期に放置しておくと症状がどんどん悪くなってしまう場合があります。
上下の位置関係に問題がある反対咬合や、舌の癖が原因の開咬などの症状は、早いうちに治しておかないと、将来外科手術を併用しないと治せなくなることがあります。
第一期治療である程度症状を改善、原因を除去、軽減することで重症化を予防することができます。
2)第二期治療の治療期間の短縮
軽度〜中程度の叢生(デコボコ)は第一期治療で顎を広げることで、第二期治療で抜歯をせずに治せる可能性が高くなります。
また、骨格の問題もある程度改善できていれば、第二期治療が簡単になり、治療期間が短縮できます。
3)顎骨の位置関係の改善
こどもの不正咬合は、成長や悪習癖など症状が悪化することがある反面、成長を利用した顎骨の位置関係の改善が期待できます。
反対咬合では、上の顎を前方に牽引し、上顎前突(出っ歯)では下顎の成長を促進するために夜間マウスピースのような装置を使用したりします。
残念ながら、全てのお子さんに大きな効果があるわけではありませんが、上下顎の位置関係が改善されると、かみ合わせだけでなく顔貌(特に横顔)も良くなります。
第二期からの治療の場合、顎骨の位置関係の改善があまり期待できないため、最終的な治療結果は第一期治療から始めた場合に比べると顔貌の変化が少なくなる傾向にあります。
●第一期治療の変化
9歳男児:上顎前突、下顎が小さく後退している
3年後:下顎が前方に成長してバランスの良い横顔に変化した
●第二期治療の変化
20歳女性:上顎前突、抜歯して上の前歯を後ろに下げる治療計画
治療後:上の前歯は後ろに下がったが、下顎の位置は変わらない