清村矯正歯科

清村矯正歯科のブログでは、矯正歯科治療の疑問や症例について解説しています。

矯正治療中に気を付けてもらいたいこと

without comments

前々回のニュースレターで、以前当医院で行った、矯正治療中の患者さんアンケートを再掲載しました。その結果を読み返してみて、再度皆さんにお伝えしたいと思ったことがいくつかありましたので、今回から「矯正治療中に気を付けてもらいたいこと」をいくつか説明していきたいと思います。

むし歯、歯周病のリスク

矯正治療中、すべての歯に金具が装着され、ワイヤーやゴムの力で歯を動かすマルチブラケット装置は、何もつけていない状態に比べ、特に虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。そのメカニズムは以下の通りです。
① 装置のまわりやワイヤーに食べたものがひっかかる
② 歯磨きが不十分だと、食べかすが歯垢(プラーク)となり、むし歯や歯周病の原因菌が繁殖する
③ むし歯菌が繁殖すると、酸を産生して歯を溶かす(むし歯)。歯周病菌が繁殖すると歯茎に炎症(歯肉炎)をおこし、放置すれば歯を支えている骨を溶かす(歯周病)。(図1,2,3)

図1 むし歯発生のメカニズム

マルチブラケット装置には唇側と舌側がありますが、どちらも食べかすが溜まりやすいのは歯茎と装置の間です。

図2歯肉炎

図3歯周病(中等度)

(図4,5矢印)この部分に付着したプラークはむし歯、歯周病両方の原因になるため優先的にブラッシングによる清掃が必要です。

図4マルチブラケット装置(唇側)

図5マルチブラケット装置(舌側)


矯正治療に関係なく虫歯になりやすい食べものとそうでないものがあります(図6)。又、矯正治療中食べない方がいい食べ物があります。

むし歯になりやすい食べ物、飲み物と生活習慣

・糖分が多い(チョコレート、甘いジュースやスポーツドリンク、飴、ケーキ、ドライフルーツなど)
・粘着性が高く歯に付着しやすい(キャラメル、チューイングキャンディー、グミなど)
・酸性度が強い(柑橘系の果物やジュース、コーラなどの炭酸飲料、お酢を使った料理・飲み物など)
・口の中にとどまりやすい(スナック菓子、クッキー、菓子パンなど)

<マルチブラケット装置で矯正治療中に食べない方が良い食べ物>
・硬い食べ物:矯正装置が破損したり、外れてしまうため(硬いせんべい、軟骨、ナッツ類、フランスパン、氷など)
・粘着性が高い食べ物:装置にくっつきやすく取ろうとすると装置が外れるため(キャラメル、チューイングキャンディー、もち、ガムなど)

両方に名前が挙がっているのは粘着性が高い食べ物です。「ハイチュー」などのチューイングキャンディー、キャラメルは虫歯予防、矯正装置の破損防止のため「禁止」です。好きな方も多いと思いますが我慢してください。
甘いものを食べる習慣がある方はむし歯になりやすい傾向にありますが、さらにリスクが高くなる習慣が
いくつかあります。
虫歯の原因菌は、炭水化物や砂糖などを原料としプラークと呼ばれる物質をつくり、その中で増殖しながら酸をつくり出します。その酸によって歯
が溶けていくことを「脱灰(だっかい)」と言いますが、食後しばらくすると、唾液の持つ酸を中和する働き(緩衝作用)によって、徐々に脱灰した歯の表面を修復する「再石灰化」を進めて歯を守もっているのです。脱灰がさらに進むと歯の表面のエナメル質に穴が開き「虫歯」になります。
したがって以下のような習慣はせっかくの唾液の緩衝作用が働かず、口の中は酸性のままになり、より虫歯になるリスクが高くなります。

図6むし歯になりやすい食べ物


・間食の回数が多い、だらだら食べる
・甘い飲み物をよく飲む
・歯磨きをしないで寝る
・口がぽかんと空いていることが多い
(口呼吸などで口の中が乾燥すると唾液の分泌が減るため)
ふだんの口の中はpH7(中性)に近い弱酸性ですが、食べ物を食べると
酸性になり、pH 5.5以下になると脱灰が始まります。唾液の作用で中和されもとにもどりますが、もとのpH 7(中性)に近い弱酸性にもどるには、50分ほどかかるといわれています。

図7食事によるPHの変化

むし歯予防のためには、食べる内容や量とともに、食べる回数や時間帯などを工夫することも大切です。
 矯正治療中はむし歯や歯周病になりやすいため、食後のブラッシングは必須です。特に生えてから間もない歯は酸に弱く脱灰しやすいため、20歳以下の方は特に注意が必要です。
 どうしても歯磨きができない場合は洗面所でお口を強くゆすぐなどして、少しでも食べかすを口の中に残さないように、又、甘い飲み物を飲んだ後も酸性になっているお口の中を中和するように心がけましょう。

<矯正中注意すること まとめ>
・ハイチュー、キャラメルは禁止
・甘いものやジュースをだらだらと時間をかけて摂取しない。
・食べた後、甘い飲み物を飲んだ後は必ず歯磨き。寝る前も必ず磨く。
・歯磨きができない場合は、せめて水やお茶などで口をゆすぐ。
・とくに20歳以下の人は虫歯になるリスクが高いため要注意。

ご覧になりたい方はこちら

Written by kiyomura

10月 7th, 2025 at 2:38 pm